思いがけない出会い、工藤慎太郎

思いがけない出会いというのは、本当に思いがけないところに落ちている。

仕事も一息ついたので、散歩ついでに娘を連れて漂流一家でショッピングセンターに出かけた。メインイベントは前日見れなかった猿回し。しかし、残念ながらその日はショーがなかった。"残念だねー"とうつむきながら屋外に出ると、人がわさわさと集まっていて、何やら今から始まりそうな雰囲気。すぐにミニ・ライブが始まるというので、そのまま立って聞くことにした。しばらくして"さわやかな若者"がサッとステージに上がり、ギター一本で歌い始めたのだが、「うまい!」。漂流一家は思わずその場に一時停泊、途中ウルウルしながら最後まで釘付けになった。

「工藤慎太郎と言います!」歌うことが楽しくてしょうがない、そんなはじけるような雰囲気が終始会場を満たし、ストレートな詩とその歌声が私たちの耳に届けられた。とにかく、その歌唱力が素晴らしく、曲を聞くというよりも、その曲の中に安心して身を預けられるくらいの安定した歌のうまさがピカイチだった。ライブだからこそ感じられる、そんなアーティストの生の、そしてダイレクトな"声"に私も船長もまさに心が揺さぶられた。

「ストリートライブをしていた僕をデビューさせてくれた歌」と言うデビューシングル「シェフ」(2006年日本有線大賞新人賞)は、ノートに綴られたばかりのような、加工のない詩、それがまたよかった。27歳の彼に共感する、というのでもなければ、「そうそう、若いときはそんなこと感じるもんなんだよ」「俺もそうだった」とオヤジくさく、また郷愁に浸る、それがいいと言うわけでもない。工藤慎太郎として生きる、というもがきやパワーを詩にして、それを抜群の声に乗せて歌う、そうして届けられた真っ直ぐでエネルギーのある歌声に、ただただしびれちゃう、そんな感動だった。

完全にステージに引き込まれ、最後はステージ近くまで移動し、気がつけば最後の歌、ライブはあっという間に終わった。「すごくよかった、とにかくうまかった」と船長と感動を共有しながら会場を離れたものの、この揺さぶられたこと、しびれちゃったことを直接本人に伝えたくなり、一度離れた会場に戻ってCDを購入、それを持って本人のところへ行った。「たまたま立ち寄ったのに、すごくうまくて最後まで釘付けでした」「ぜひこれからも真っ直ぐでいてください」と伝えて握手、「まっすぐですね、わかりました。ありがとうございます!」という笑顔も上昇気流の真っ只中にいるそんな新鮮さが満ち溢れていて、さらにググッとくるものがあった。行ってよかった、満たされて一家で帰路についた。

ライブの感動やその時のふれあいまで感じられるCDは、一家の大切な一枚になった。もしかしたらずっと知り合えないかもしれないCD、それがある感動と共に我が家に流れる、すごい出会いだ。私はアンコールで歌った16歳の時失恋した思いを書いたという初めての歌「ひまわり」が一番よかったのだが、その曲がCDに入っていないのが残念だった。それに、バックバンド付のCDだと、アコースティック一本のライブのよさも、彼の歌唱力も薄くなっちゃうものの、ライブが抜群にいい工藤慎太郎を証明しているようで返って嬉しい。ただ、このCDをショップの視聴コーナーで聞いたところで買わないだろうな、と思う、無難にまとまっちゃってインパクトは薄い。それから、このジャケットや中の写真を見ても、私たちが見た工藤慎太郎のよさ、弾けるようなエネルギーが表れてなく、もし店頭で偶然手にしても棚に返してしまうだろうなという平均的なもの。まあCDはCD、あのライブはとにかくよかった、もう一度行きたいと思わせてくれるライブであることには違いがない。

オフィシャルサイトで調べると、ファーストアルバムが9月16日に発売されたばかり、まもなく全国ツアー開始、とまさに上り調子。星の数ほど歌を歌う人はいるけど、多くの人の耳に届くような歌を歌えるのはほんの一握り。CDでは伝わらない素晴らしい歌声とあのストレートさを持った工藤慎太郎が、次にどんな歌を歌ってくれるのか、それを楽しみに陰ながら応援していきたい。

私もそんな出会いにつながるような文章を書きたいな、とまた励みになった出会いだった。
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コメント

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心の歌♪

最近心の琴線をぽろろんと鳴らしてくれるような清らかな歌
に出会うことが多くなったようです♪

中学生時代はa-haにはまってキャーなんて言っていた私も、
今はもっぱらメローなジャズや癒し系ミュージック。。。





心の歌

コメントありがとう!我が家も普段はヘブライ語、スペイン語などの歌や、ジャズなんかが多いので、工藤慎太郎のような歌手にピンと来るとはかなり予想外でした。
CDを聞くたびに、彼のライブがいい、また行きたい、と思う日々です。