漂流博士

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佐藤真監督:現場に対する一定の距離と執着心

現場に行って見たものをそのまま感じさせてくれるドキュメンタリー作品、「エドワード・サイードOut of Place」(2005年)を見た直後のその感動を伝えた佐藤真監督が亡くなってしまった。

「阿賀に生きる」の人、としか知らなかった佐藤真監督が、中東しかもエドワード・サイードを切り口として映画を作る、と聞いた時は特別な期待が沸いたわけでもなかった。しかし、「さっき編集が終わったばかりで、私も今から初めて見るのです」と佐藤監督が挨拶をした初の試写会で作品を見た直後、怒りや正義といった紛争地を舞台とした作品にありがちな安っぽいメッセージ性が全くなく、現場の空気がそのまま伝わってくるようなストレートさに私はとても感動した。会場を出てその感動をどうしても伝えたい、と佐藤監督に歩み寄って話しかけ、佐藤監督が「勉強不足でしかも短期間で作ったので全然現地のことは分かってないと思うんですけど」と謙遜したのが最初で最後の会話となった。どうしたらあんなに現場の空気をそのまま伝えられるのか、いずれまた別の機会で是非お話を伺いたいと思っていたがそれはかなわぬ夢となってしまった。

この地域を扱ったテレビのドキュメンタリー作品は多数あるのだが、現場で何が行われているのかを伝えることよりも、最初から番組的な視点(物語性)に立った結論ありきで、映像も結局はその結論を縁取るために並べられているだけのような作品が多い。その中で、同作品はとても短期間で仕上げたとは思えないくらいに現場に根ざした冷静な視線が魅力で、途中に入る個別のインタビューの声にもずっと聞き入ってしまう。テレビと映画の違いもあるとはいえ、どれも同じ「ドキュメンタリー」と呼んではいけないのではないか、と思ったのもこの作品が初めてであった。

私はもう何年もこの地域に関わっていながら、佐藤監督のような現場に根ざした描き方ができる自信がまだない。それは描く主体としての視線の問題、それと描き方という技術的な問題、その両方がいずれも未熟だからという自覚はしているのだが、新たに「現場に対する一定の距離感と執着心のバランス」が足りないのだ、と佐藤監督を思い出しながら課題として突きつけられた気がした。

「一流とは継続すること」、4日のNHK『プロフェッショナル』に出演した靴職人山口千尋氏の言葉がまだ耳に響いているが、継続することを自ら断ってしまった佐藤監督の死は、現場をそのまま伝えるという当たり前のようでいてなかなかできない心構えや技術を若手に伝える機会まで断つことになり、本当に残念でならない。

謹んで哀悼の意を表したい。
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