漂流博士

仕事は仕事、人生は違うところにある。

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イスラエルのテレビで働くということ

と言い切れるほどまだ豊富な調査や事例が多いわけではないが、イスラエルの民放チャンネル10の日本コーディネーターを三回担当して、特に今は今月末に来日する「The next world」の取材のため大詰めの一歩手前になってきたので雑記メモとして記録しておきたい。

「The Next World」は世界7カ国で取材をして来年2月午後8時から50分間、7回シリーズで放映予定のかなり大掛かりな番組で、タイトルが示すように、テーマ毎に「次の時代の世界」について論じるというドキュメンタリー。日本では京都議定書以降の環境対策の取り組みと、少子高齢化の取り組みについて、それぞれが世界の中でも先端をいっているはず、という番組企画者の発案に基づいているのだが、2ヶ月以上取材をしていながら未だ番組のシナリオはない。昨日事前取材のために何人もの方にお会いしたが、その多くで「どんなシナリオなんでしょうか?」と聞かれて、改めてそれがないことに気が付いた。

番組のシナリオなしでコーディネーターに求められるのは、可能な限り番組コンセプトにあう取材可能な場所をリストアップしていくこと。シナリオはなくても番組コンセプトはあって、今回であればイスラエル社会として将来的に学べるような日本の取り組み、制度、問題点、そして元気な高齢者の紹介をすることにある。

実際に何を撮影したいのかをプロデューサーに聞いても「撮影が可能なもの、できないものは無理して撮らない、だから何が撮れるのかをまず聞け」と受身の姿勢が返って来る。ただ、コーディネーターの立場からすると、Googleで「少子高齢化」と検索してヒットした先から闇雲に電話して「撮影できますか?」といきなり聞くのは全く非現実的。結局、まず現状としてどんなことが実際に行われていて、またどんなことが「日本の」と説明してもおかしくない最大公約数なのかを調べるところから始まるのだが、この過程は、卒論、修士論文を書き始める際に行う先行研究のフォローに似ている。チャンネル10のコーディネートは三回ともほぼ同様の作業手順でロケ班を迎える準備をしている。

一方、かつて日本のテレビ番組製作過程に数度関わったこともあるのだが、最初からある程度のシナリオが固まっていたのを記憶している。最初からインタビューする人、場所が明記された全体の流れ図のようなものがジャンジャン送られてくるのだが、コンセプトというか、思い込みというか、どうも現状抜きの一人歩きという違和感を何度も受けたこともよく覚えている。

チャンネル10がそれとは対称的なのは、とにかくシナリオが存在しないということ。見たこともなければ、プロデューサーと話をする中で出てきたこともない。プロデューサーとのやり取りと言えば、最初にたたき台程度のロケ取材地候補リストが送られてきて、その後も取材可能な更新データをやり取りするのがメインとなる。最初のたたき台に目を通すと、どんな方向性に進もうとしているのかというベクトルは感じ取ることができるのだが、さらにプロデューサーとの詳細な電話連絡でベクトルを具体化して進めていく。最初の候補リストはイスラエル人のリサーチャー(ほとんどが番組毎の短期スタッフ)が英語/ヘブライ語で検索したデータを基本としているので、「日本の」最大公約数からはずれていることが多いし、ローカルな視点が抜け落ちていることも多い。例えば、今回も日本の少子高齢化がテーマでありながら「団塊の世代」「2007年問題」といったキーワードは最初入ってなかった。

どれが絶対、ということはないのだが、文化人類学的な調査方法で仕事を進めることのできる専門的な満足感と、仕事の自由さと楽しさという点では今が充実している。ただ、テレビは映像なので「絵になるもの」を求めざるを得ない。文字とせいぜい写真に依存するしかない文化人類学との違いはあって、そこでの不満足度というのもあるのだが、それは次回に。
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