漂流博士

仕事は仕事、人生は違うところにある。

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やるだけやった(その一)

(スタートからの時間軸に沿った改訂版その1)

とにかく完走!という初挑戦だった昨年と異なり、今年は4時間以内、いわゆるサブフォーという明確な目標を立て、船長のプログラムの下で練習を積んできた。とにかく長く走れる体を作ろう!と臨んだ昨年とは違い、ある程度のスピードを体に教え込む練習を導入するため時計と心拍計を身に付け、数字をにらみながら走り、そして記録を書き込むというデータ型へと大きく練習スタイルをシフトさせた。これまでは、自分の体と対話しながら走ってきたので、時計をつけて数字を見ながら走るというのは全く初めてだった。

11月20日に15キロ、2月20日にはハーフとそれぞれ大会にも出場し、週二日から三日の練習も予定通りにこなし、3週間前に30キロプラスを走って練習のピーク、その後徐々に距離を落としながら、体が走りたい!とウズウズするくらいまで疲れを取り去ることをイメージしながら調整。最後の一週間は、パスタとご飯を繰り返し、体内から42キロを走るのだという感触をよみがえらせていく。昨年のように体内や足に炭水化物が溜まっていく感じはないけれど、全身の疲れは取れていき、いつもの左側の足腰の「こり」もとれていい感じだ。「走れるだろうか」という一抹の不安を残した昨年と異なり、前日から随分と胸が高ぶり、楽しみでしかたなくなってきた。野球の試合の前日のように、これまでの練習の成果を発揮する時が目の前に迫ってきたことで、全身が緊張感と高揚感にジワジワ満たされる、あの感触だ。船長と共に、この感覚を味わえることがまずは幸せだと何度も口にする。そんな緊張感と高揚感を抱きながら、前日はまだ外が明るい夜7時過ぎに床に付いた。

午前3時5分に目を覚まし、きな粉にまぶしたもちを二個、ゴマをかけたご飯を二杯食べる。走っている最中に空腹になりエネルギー切れになるほど辛い事はないことを、3週間前の30キロ走で久しぶりに体験したので、食事は多めに取ろうと意識的に噛みながらしっかりと食べる。そして、溜まっていたメールに返信したり、ゼッケンをつけたりしながら徐々に体を覚まし、5時過ぎから最近お気に入りのAvishai Cohenの『Seven Seas』を聞きながらじっくりとストレッチをして心身ともに盛り上げていく。

今年はスタート地点が自宅から3キロ弱なので、スタート一時間前の朝5時半、船長の声援を受けて自宅を出る。いよいよだ。早朝独特の静かな路上を、走りたいという気持ちを抑えながら早足で歩く。同じようにスタート地点に向かう何人かのランナーを目にして、どんどんと気分が高まり、40キロ地点の看板を見て、およそ5時間後に訪れる自分の最後の走りをイメージする。着々と一歩ずつしっかり走っている。

昨年は直前の開催日変更で500名弱だったマラソン参加者は、今年は1300名と多く、スタート地点は随分と賑やかで、朝6時半とは思えないほどボルテージが高く、スタートの号砲を鳴らすテルアビブ市長も興奮気味に「元気ですか~」とまるで猪木、それに対してランナーが「オ~」と応えて益々ムードは高まり、体が「走りたい!」と思うと同時に一斉にスタートのラインを切った。

体調はいい。走り出しは早すぎず遅すぎずいいペースで体が動く。一キロは5分43秒、船長と5分45秒で入れればベスト、と言っていたので理想的な入り方だ。空気も気持ちがいい。緩やかな坂のアレンビー通りに入ると、一晩の仕事を終えて帰る若者がナチュラル・ハイの状態で大声出しながらカツカツと大勢で歩いている。その横をランナー達がが駆け抜けていく。早朝の新宿駅のようだ。朝まで飲んでた不健康そうな若者と、登山の格好をしたすがすがしい中年夫婦が乗り合わせる中央線の車両のようだ、懐かしい。コースは世界遺産「ホワイトシティ」へと向かっていく。三キロ先ユーターンから戻ってきた先頭集団が左手に見える、ケニアからの招待選手だろうか、3名が揃って走っている。その後ろから、薄いピンク色のオーソドックスなウェアに身を包んだ前かがみで走る中年の男性が近づいてくる、去年も走っていたあの彼だ!またこうして同じ舞台で走っているということが嬉しくなる。後ろから「彼はいつも走っている○△だ」という声が聞こえる、有名なんだな。建築中のテルアビブの文化村をユーターンするところで、カメラが付いたおもちゃのようなリモコンヘリコプターが頭上からランナーをとらえているのを見つけ、今年の大会が結構隅々まで行き届いていることを感じる。フルのほかに、4.2キロ、10キロ、20キロと合計約1万9千人がこの街を走るのだ。

あっさりとホワイトシティを抜けて6キロ過ぎから徐々に北上する。船長と海が待っている8キロ地点を目指して自然と足も軽くなる。写真サービス「ねえ撮って!」のお姉さんが僕にレンズを合わせる。「博士!!」と日本語で声をかけられ、思わず「ありがとう」と大声で応える。一度電話で知り合った日本滞在経験者のイスラエル人だ。覚えていてくれたんだ、嬉しいなと思っていると、左前方にチョコンと座った船長と海が目に入る。両手を上に広げ、左右に揺らし、それでも気がつかないので手をたたくと、船長が走って近寄ってきてくれる。前日の入念な作戦会議でお願いをしていたスペシャルドリンクを受け取り、さらにオレンジと黒砂糖を受け取る。その間、船長は数十メートル左横で伴走し、後方のランナーからは「すごいな!」とチームの連携振りを見た羨ましさと感嘆が混じった声が聞こえてくる。一人になって9キロ地点に向かうと、突然の雨!先ほどまで青空だったのに、体にポツポツと粒があたるようになり、それはやがて体を濡らす冷たい雨になった。数分で止んで日差しが出てきたものの、14キロ地点手前で再び急に雲が黒くなると、また雨粒が落ち始め、今度はかなり強い雨脚となって靴も濡らし、体を冷やした。今日は暑くなると思っていたので、意外なところで体が冷えたことと、体があったまったなと思うと冷えるという繰り返しで気を取られながら、一キロ5分30秒前半のペースで走る。足が自然に流れるなら無理に5分40秒に意識しすぎるよりも、5分30秒くらいでもいいなと思っていたので許容範囲だ。幹線道路をただひたすら14から15、15から16と数字を増やすためだけにヒタヒタと走る。距離の表示が2キロ毎のところもあり、ラップが何度かあいまいに表示されるのを気にしないようにしながら、船長が待つ第二のステーション21キロ地点に近づいていく。
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