漂流博士

仕事は仕事、人生は違うところにある。

  

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90%から40%へ

ガザ境界付近からの中継と、同じ顔ぶれのテレビ解説員、とまらぬロケットの数と増え続ける死者の数、毎日はそんな風にずっと続くのではないかとさえ錯覚していたので、停戦で空気が一気に日常生活に戻り、ハッと夢から覚めたようでもある。

停戦発表直後のチャンネル10では早速独自の世論調査を発表。2月10日の選挙にはなんら大きな影響を与えず、相変わらずネタニヤフがリード。次に「今回の紛争は成功だったか?」の問いに対しては、YesとNoがそれぞれ41%。先週はYESが80%くらいを維持していたのだから劇的に変わっている。続いて、Noと答えた中では、1)ハマスがまだ軍事能力を十分残しているから、2)誘拐されている兵士はそのままだから、3)ガザの市民の犠牲者が多すぎるから、が三大理由。

戦争が終われば「そもそもなんで攻撃開始に至ったのか?」といった「そもそも論」も含め、一気に批判や議論が出るとは思っていたが、何とも分かりやすい数値だ。昨日電話してきた友人(男性)は、「今イスラエル人だ、というのは恥ずかしいぞ」とも。自己存在を否定していたわけではないけど、国際社会の空気を読めばそれが現実だ、というのは十分納得できる一言。

ラジオでは、戦争時にはみんな注意して運転するので事故が少ない、注意力が散漫になる今後は要注意とも。確かに戦時中のほうが何となく引き締まった空気はあったし、停戦となり何となく緩んだ空気が舞い込んでいる気がする。「戦後」はこんなところにもあるのか。

国際社会のニュースからは徐々にフェイドアウトなのだろうが、これからが批判と議論の始まりなのであり、その理解をなくしては今回の紛争が何であったのかも分からなければ、紛争勃発を回避することもできないかもしれないし、運転同様気を引き締めないと。
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日常感覚で、冷静に、

随分たまっていた空き瓶を近くのスーパーに返しに行くことで一日がはじまった。一本は四分の一シケル(約7円)だけど、ちりも積もれば、であるし、何より捨てなくていいのは気持ちがいい。近所のスーパーでは空き瓶とペットボトルの回収の場所があって、そこに立っているおじさんの目の前で回収用袋に「いっぽん、ニホン、、、」と入れていって、最後におじさんから本数を書いた紙切れをもらい、買い物したあとでその紙切れをレジに持っていくと、その分を引いてくれる、というシステム。今日はピタパン5枚一袋プラスアルファ分になった。いい気分である。

そのスーパーのなかに、兵士に贈り物をという趣旨のポスターが貼ってあって、イスラエルの住民から兵士へ贈り物を送ろうというキャンペーンがあった。店員の胸にも「気持ちを兵士へ」とキャンペーンスローガンのステッカーがはってある。野菜が積まれたスーパーの中を歩きながら、ああ、戦争なんだな、ということを切に実感した。この地にいると、日常と紛争の境目は時々あいまいなところがあって、そのことはこれまでも何度か経験してきたのだが、今日スーパーで感じたことは、そういうこととは違った。まだいい表現が見つからないけど、とにかく違った。戦争という響きとは正反対の空間なのに、当たり前のように戦争ということばを受け入れられている時間、その矛盾しているようでいて完結している空間と時間のバランスが今でも不思議でたまらない。

スーパーのサイトにもあった。画面右のハートが出ている赤い四角の枠がそのキャンペーン。
http://www.shufersal.co.il/supersol_he/

レバノンの時にも感じたのだけど、紛争は長引くと報道はどんどん個別の事象にフォーカスするようになって、広い視野で戦争を見れなくなる。読者も視聴者も、単純な勝敗のゲームに引き込まれていくようだ。というのは、なにもここ現地でのことではなくて、いやむしろ、外の方が傾向として強いのではないかとさえ思うときがある。

イスラエル国民91%が攻撃を支持、というタイトルはニュースになっているのだが、イスラエル国外のメディアを斜め読みしていると、「9割支持」の一人歩きの感が見えるので、その世論調査の質問文を一応は確認しておくことは必要があると思うので記しておく。

「11日前、イスラエルに対するロケット発射を阻止することを目的として、イスラエル国防軍はハマスとの闘争を開始したが、その作戦実行についてどの程度支持または反対しますか?」

すなわち、ハマスのロケット攻撃に対して武力を行使したことをどう思うか?という質問。ちなみに対象者は800名。

これまで8年間、イスラエル南部にロケットが飛んできていたにもかかわらず、安全室建設に対する政府の補助金支出が随分遅いなど、認知されずにほとんど放置されてきたという事実があった。そんなロケット攻撃に対して、軍は何度か空爆攻撃をしているが、それでもロケットは止まらなかった。12月に停戦が半年経った後、ロケット発射が増加して、放置するのか、何もしないのか、という政治的プレッシャーが高まった、その中での攻撃が始まった。

今回の戦争で、テルアビブに避難してきたり、多くの国民がすっかり南部に釘付けになったことでロケットの恐怖と言うものが随分広く認知されたことは事実だろう。私がかつて留学していた、ガザから40キロ離れた南部最大の街にまで何発も着弾するとは、さすがに多くの国民も思っていなかった。これまで気がつかなかったことへの反省、そして、気がついたら南部は結構大変なことになっている、という認識。この9割という数値は、そうした南部への意識が高まったことを強く表している。以前にも書いたが、もう一度確認しておくと、開戦前夜の世論調査では、大規模攻撃への支持は48%で、反対は44%だった。

当たり前のことであるが、9割の人が、女性子どもを犠牲にしてでも攻撃すればいい、と言っているのではない。

「イスラエル兵」へのミクロ視点

前線に向かう兵士の新聞の写真や、テレビ映像を見るとき、私が最近関心を持ってみていることがある。普段あまり知り合うことのない、エチオピア出身のイスラエル人や、アラブ系のイスラエル人、それに宗教的に敬虔な人たちが随分多いからだ。

南部の街ベエルシェバではよく目にしたエチオピア出身のイスラエル人は、テルアビブのど真ん中ではなかなか目にしない。エチオピア系は住宅事情や職業の関係で、地方に多いのだな、ということを改めて理解しているのだが、前線に向かう兵士の中にそのエチオピア系イスラエル人が結構いるのだ。「軍隊は人種差別がないから」と積極的に、しかも前線を希望するエチオピア出身の若者が多いのだが、ガザ地上戦に向かう兵士の映像はその傾向をきれいに証明している。

もう一つ、頭にキッパをつけた司令官、祈祷をする兵士が多い。これはイスラエル兵の特徴、でもあるのだろうが、特にその割合が増加しているのはここ最近の特徴だ。今日盛んにテレビで流れていた負傷した兵士の姿や、家族の言葉や髪の毛や全身を覆うような服装にも、宗教的な特徴があるので、やっぱりそうなのかと一人納得する。「短時間しか従軍できず申し訳ない」と発する負傷した兵士の言葉も、宗教的に「この地」を守ることを強く信じているのだからまあそうだろうな、と思う。

ちなみに、ガザからの情報が限定的になる一方、ロケット被害にあった南部住民のインタビューに随分多くの時間が割かれるようになった(かなりワイドショー化している)。しかし、これまで南部の住民は、ガザからロケットが飛んできたのに安全室やシェルターなど国による治安対策が何年もおろそかにされてきた。それが戦争になって国の視点が一気に南に集中するようになった。ごくごく自然で当たり前のことなんだろうけど、どうもその劇的で露骨な変化に私はついていけていない。

紛争時のテルアビブ

パレスチナの旗を振った攻撃反対デモが自宅のすぐ近くであったので散歩気分で見に行った。参加者は大半がアラブ系のイスラエル人で、イスラエルの国旗も掲げられていたが、私には人生初めて目にした赤旗が何よりも衝撃だった。よく見ると国会議員も共産党系だ。そのデモの人数三分の一以下位の、デモへの反対デモ(何ともややこしい)がわずか100メートルくらいのところで行われていて、イスラエルの国旗を振った若者が攻撃を支持するスローガンを唱えて熱いムードを漂わせていた。そっちの反対デモは、参加者の格好、スローガンのリズムなど、サッカーの試合のようなムードだ。よく聞けばサッカーの試合が中止になったとのことで、そのままこっちに流れてきたのではないかという位スタジアムの雰囲気が一杯だった。男ばかりのその数百人からなる反対デモを治安当局が厳重に警備するその目の前を、赤旗の集団が通過するという、イスラエルでは初めて目にする不思議な光景にも遭遇して、こんなことがテルアビブでもあるのだということを驚愕と共に目撃した。
このデモは、攻撃の反対と賛成を支持する行為というよりも、日ごろ鬱憤が溜まっているアラブ系イスラエル人と、サッカー好き右派系の自己表現、という説明の方がしっくりくるように私には見えた。

デモの声が耳に残ったまま、娘の誕生パーティーの品を買いに自転車で街中を出かけた。夜の土曜日は週の始まりでもありかなりにぎやかなムードがテルアビブには広がる。自転車をこいでいると「寿司処」というイスラエルでは初めて目にするのぼりを目にした瞬間、直前に飛び込んだガザ地上戦開始の言葉が再び頭を飛び交って、あまりにあっけらかんとした「寿司処」の響きと地上戦に向かった兵士の映像という何ともいえないミスマッチに目の前がくらんだ。

私が高校生の頃に湾岸戦争が勃発し、初めて目にする中継される戦争を見て、現場から中継する特派員、ジャーナリストという職にあこがれたのだが、それから20年近くが経過し、車で一時間半位の場所にロケット弾がどんどん着弾し、すぐ隣では多数の死者が出るほどの紛争が行われているというこの地に立って、果たして現場とは一体なんだろうかと全く分からなくなった。今回のガザ紛争にはメディアが一切入れず、中継は全てイスラエル側のガザ境界付近に限られていることもあり、なおさら現場があいまいな紛争だ。地上戦が始まると、これまでほぼ通常放送だったテレビも現場中継特集に切り替えたものの、情報管制がひかれるので情報そのものは入ってこないこともあり、負傷者数や犠牲者数でさえなかなか更新されず、地上戦の行われているガザでは一体何が起こっているのかはよく分からない。

新聞も同じくかなり限界ある情報の中からの報道だけれども、ひとまず一面。

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昨夜数万人規模の予備役召集が出されたので、何度か電話していた友人達もおそらく召集されている。電話した頃は、まあ召集はないだろう、という気分だったので気楽に電話ができたが、確実に召集されていることが分かるとあえて電話などすることは彼らにとって非常に迷惑な行為であることに気づいた。それならただこの状況が早く終わることを願って、「うちに飯食べににくるか?」と気楽に電話する日を待つことにしたい。

(ちょっと無理しながら)あけましておめでとうございます。
海もいつもどおりに幼稚園に通い、仕事も普通どおり。街のバーでは2008年から2009年へのカウントダウンというのは存在するものの、それ以外の新年ムードというのはなく、盛り上がりに欠ける新年。ここでは直接危険を感じるわけではないけど、実際に多くの命が失われる紛争が漂わせる重く嫌な空気はここでも感じるので、なお更今年はいい年になって欲しい、とまずはガザと南部を頭に思いながら願う。

一昨日はかつて留学していた街にロケットが着弾し、以前から報道されていたロケット推定最大距離40キロに到達した。今日はお世話になった先生が亡くなって(参照:)その街にある大学で先生を偲ぶ記念講演が予定されていたのだが、(避難命令を指導する)民間防衛軍によってガザから40キロ区域内の教育機関の閉鎖指導があったために中止になった。私は、空爆が開始され、ロケット推定距離にその街が入っている事を確認した時点で、出席をキャンセルしていたが、あくまで「念のため」だったので、まさか本当に飛んでくるとは想像していなかった。

すでにガザへの空爆で400名近い死者が出ても、ロケットは発射され続け飛距離は着実に推定距離に到達している。武力ではテロの戦力を落とすことにはつながらない、という事例はアフガン、イラク(目標は国家であったが)そして第二次レバノンと枚挙に暇がない。先日の閣議で新たに追加された予備役2500名の召集に自分も入っているのではないか心配だ、という友人の言葉を引用すれば「どうしようもない命と時間の無駄」だ。そう言いながら銃もって戦場に向かう気分など、私には全く想像さえできない。

さて、2009年1月1日の一面は以下の通り。今日はイェディオットとマアリヴの写真は対照的です。

ハアレツ
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写真は、ロケット被害に遭った建物を訪問するリヴニ外相
大見出し:閣議は紛争継続を決定;国防軍早い展開を求む
小見出し:対ハマス戦争:政府はフランスによる停戦案を拒否。イスラエルの条件:国際社会による査察。ロケット約70発がイスラエルに着弾、ガザの死傷者は395名へ。民間防衛軍は緊急状況区域を拡大。
世論調査:52%ガザへの空爆継続、19%地上戦を含む作戦の拡大、20%即時停戦努力、9%分からない/未回答
(対象は472名)
ちなみに、左下の広告は左派政党による停戦を訴える広告。

補足:フランスによる停戦案とは、人道的観点による48時間の一方的停戦。オルメルト首相は、開戦時から一日約100台の医薬品、食料を搭載したトラックをガザへ通過させている事実より、ガザに人道的な危機が存在せず、フランスの提案は受け容れられないとの説明。


イェディオット・アハロノット
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写真は、ロケットが着弾してもカウントダウンパーティーで2009年到来を祝福するベエルシェバの若者。
大見出し:危険範囲拡大、ガデラ町でも休校;オルメルト首相バラク国防相を非難
小見出し:首相、フランス外相と停戦について接触したバラク国防相を激怒○国防相オフィス:指導者と会話をするのは大臣の権利
補足:フランスの停戦案はフランス外相からバラク国防相に直接伝達。オルメルト首相はインターネットで初めて知りそれが逆鱗に触れたとの報道も。国防相が停戦情報を報道に流し、その後国防軍がそれを否定する、という稀な展開が起こりました。

マアリヴ
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写真は、ガザとの境界で待機する国防軍兵士
大見出し:ガザへの分かれ道:イスラエルは地上戦に向けて前進、しかし政治レベルでは停戦を模索
小見出し:地上戦は不可避の模様■しかし、政府は政治主導での作戦終了の可能性を諦めず、ハマスにロケット中止を強く迫る■本日時点、20万人の生徒が自宅で待機。

12月25日、久しぶりにブログ更新をしたら27日に空爆開始となり、久しぶりなのに紛争情報ばかりが続きますが、少しでも早く終わることを心から願いつつ。
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